はじまりのつどい「豊かなくらしってなんだろう」

その7
エンディング

有村

今回「豊かなくらし」というテーマを受け取ってからずっと考えておりましたが、わたしはやはり使命感を持って挑戦できる環境があるというのが、豊かさなのではないかと感じています。

日本人は、働き口はあるが満たされていないということなのかなと。自分が働いたことに対して「こんな仕事じゃないのにな」という話をよく聞きます。

ここで、わたしが「豊かさ」というのはこういうことなのかなと感じたエピソードをふたりの女性の紹介とともに、お話ししたいと思います。

小松さんのネパールインタビュー
有村

1人目は、ドゥルガさん。シャプラニール主催のネパールスタディーツアーで、小松さんと共に訪れたネパールで出会った女性です。

スタディーツアーで訪ねたのは、シャプラニールの取り組みのひとつである、She with Shaplaneer(シー ウィズシャプラニール)の石鹸をつくる女性たち。

わたしは彼女に「石鹸づくり をして一番良かったことはなんですか?そして、ドゥルガさんは正直に言って、今幸せですか?」と質問をしました。

答えは「わたしは幸せです」ということでした。なぜかと聞くと「わたしの子どもや孫が学べる環境にあるからです」とおっしゃいました。ジーバンさんのお話のとおり「教育」が、幸せに繋がっているのだと感じました。

武山さん上野アトレ
有村

2人目は、武山洋子さん。彼女は、東北グランマのクリスマスオーナメントのつくり手のひとりです。

実は武山さん、この取り組みがキッカケで、NHKニュース番組『ニュースウォッチナイン』に出演されています。震災の年の「勤労感謝の日」にあわせて全国放映されたのですが、その中で語られたのは「オーナメントづくりという“仕事”があったから、生きようと思うことができた。」という言葉でした。

武山さんを含め、大指のグランマたちは、もともと漁業を営む女性です。震災による津波で、家や財産、そして仕事を失いました。男性は瓦礫の撤去などの仕事がありました。でも女性たちは、仮設住宅でひとり、帰りを待つ時間が増えたといいます。

「もうこのまま命を絶とうか」と、何度か崖の上まで足を運んだと、後に話しをききました。そんな中、2011年6月頃から東北グランマのクリスマスオーナメントが始動。朝7時半から集会場に女性たちが集まって、手しごとをしながら話しをする場ができて、「わたしも大変、あんたも大変。だけど命があるからよかったね。」と考えが少しずつ変わっていったと言います。

「すべきことがある」という幸せ。誰かのために仕事をしているということが、救いになったと言ってくださいました。その言葉を聞いた時は、本当にうれしかったですね。

渡邊

そうでしたね。

有村

東北グランマのクリスマスオーナメントの取り組みは、メディアに取り上げられたことで一気に多くの人の共感を呼びまして、JR上野駅にはグランマたちが作ったオーナメントを飾った大きなツリーが飾られました。

実はこのとき、数名のグランマたちに東京へ来ていただいて、上野アトレの従業員の方たちにオーナメントのつくり方を教えてくれて。そのときも「これが生きていることのご褒美なのですね、幸せです。」と言ってくださいました。

渡邊さんと小松さん
渡邊

上野アトレの従業員の方たち30~40名くらい集まってくれて。それにグランマたちは、本当にみんな輝いていたよね。

有村

はい、ほんとうに。豊かさがひとつひとつ生まれているという実感をしましたね。

さて、最後のまとめに入ってしまう前に何か。何か言い足りないところがあれば。

渡邊

ではわたしから。ここにつどっている皆さんは、幸せですよね。

いかがですか?実は今日その質問をしたかったのです。皆さんは、自分で来たいとおもってこの会に来ることができている。もしそうでなかったら、人のために何ができるだろうと考えるこの会に、自分の時間を、お金を、労働を使うことができるでしょうか。だから、わたしはここにいる皆さんが、豊かな暮らしをしているのだろうと感じるのです。

人に何かをしてあげることは、実は結果的に自分のためになっている。それを一番良く知っていらっしゃる人たちがここにつどっているのかなと感じます。

有村

そうですね。

小松

幸せ、豊かさの定義、感じ方は人それぞれ。先ほど、問いかけをしましたけれど、自分にとっての豊かさを考えたときには、きっと皆さん一人ひとり違ったものの見方、物差しがあるのではないでしょうか。

今回は『海外協力のつどい』なので、ほかの国のことも考えてみると、日本を含む先進国の中での豊かさについての議論と、我々が活動している南アジア地域での議論というのは、おそらくベースになる状況がまったく違っている。おそらく、全く違う話になっていくのだろうと思います。

先ほどジーバンさんは「教育」が必要だとおっしゃいました。わたしは、まずは「経済発展」という答えが返ってくるのかと考えていたのですが、そうではなかった。教育に希望を見いだし、教育こそが人々を幸せにしていくのだという強い想いを感じました。これはわたしにとっても今回新たな発見でした。

このように、皆、見方や考え方が違う。国や地域を越えると、また議論の土台が違ってくる。ということで、今回この2日間のいろいろな分科会がありますけれども、様々な違いのある人たちが集まって多様性の議論をする。そういったことも意識しながら、この2日間を過ごしていただければと思います。

有村

ありがとうございます。

渡邊さん後半
渡邊

わたしからもうひとつ、つたえたいことが。東日本大震災で兄弟や両親を亡くした小学校6年生の子が、ひとりで避難所で暮らしていたときに学校の掲示板に書いた、全校生徒へのメッセージです。

「1年生から6年生の皆さん、お元気ですか?3月11日に津波が来て、みんなが違う場所にバラバラになって1週間が経ちました。家がなくなってしまった人もいると思うけど、みんなで助け合って、笑顔で頑張っていきましょう。そして、その笑顔でまわりの人に元気を与えてください。大槌町小学校6年 越田玲奈
そして、今みんなができること、1つ、明るい挨拶、2つ、進んで仕事を見つけること。3つ、元気に遊ぶこと。4つ、手洗いうがい、健康第一。」

わたしは、これが豊かな日本社会の象徴であってほしい、そのように思います。

有村

さて、1時間という短い間でしたが、これで本当に最後となります。みなさまいかがでしたでしょうか。これからスタートする『海外協力の集い』が皆さまにとって良い出会いや気づきの場として、有意義なものになりますよう、心より願っております。

一隅を照らしなさい-最澄
有村

最後のスライドです。

最澄が、「一隅(いちぐう)を照らしなさい」という言葉を残しています。今日のような小さな出会い、各自、持ち寄ったそれぞれの思い、世の中の、その小さな片隅を照らすと、それが一つひとつの灯火になって、やがては日本、やがてはネパール、バングラデシュ、世界が一つになって、明かりが灯るのではないかというメッセージ、先人が残しています。

皆さんにとって、どうかこの2日間が有意義であり、更に未来に繋がっていく有意義な場でありますようにと思いを込めて、このメッセージを最後にお伝えいたしました。ありがとうございました。

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