おまたせ!本になりました 藤村靖之の非電化の夕べ

『非電化の夕べ』から
1年ちょっとたちました

株式会社budori(当時の社名はガーデンラボ株式会社)が非電化工房の藤村靖之さんをお招きして開催したトークイベント『藤村靖之の非電化の夕べ』がおこなわれたのは2011年8月5日のことでした。
それから、すこし時間がかかりましたが、ようやく書籍版『藤村靖之の非電化の夕べ』が、この夏の終わりに出版されます。この本の出版にあたり、改めて、この1年間を藤村さんにお話をうかがいに、真夏の非電化工房を訪ねました。

  • 藤村靖之プロフィール
  • 書籍版 非電化の夕べ
  • そもそも非電化の夕べとは?

『非電化の夕べ』から1年ちょっとたちました 1「良いビジネス」の反対側

有村

『非電化の夕べ』を開催した8月5日から、ちょうど1年が経ちました。本日は、『それからの非電化の夕べ』ということで、改めて、お話をうかがいたいと思ってお訪ねしました。あの日、マインドセットについてのお話をうかがいましたが、なかなか社会では、従来のマインドセットを解き放つことができない…それどころか、結局、何の設定も変わらないまま元に戻ってしまったのではないか…。そういうところが、結構あるのかなと思うんです。今回、『非電化の夕べ』を出版するにあたって、さまざまなかたの話を訊いてみたら、2012年現在の藤村先生のお話を聞きたいという声が多かったので。

藤村

なるほど…。それなら今日は「仕事のあり方」っていう切り口ではどうでしょう。

有村

いいですね。お願いします。

藤村

もしかしたら仕事とか、あるいは結婚して家庭を持つってことは、ふたつの決定的な重要なこと。その人の一生のうちの一番といってもいいくらい、重要なことでしょう。だけど、今日の仕事のあり方っていうのは、まあ、仕事=ビジネス。で、ビジネス=競争に勝つことっていう。そういうふうになってしまってるんですね。

つまり、こういうことが言えるわけです。仕事をやればやるほど、経済が大きくなればなるほど、人と人とはますます仲が悪くなっていく。それが当たり前になってしまった。

「仕事というのは、競争に勝つことなんだ」っていうマインドセットが、ここにもある。

有村

そうですね。

藤村

これ、極端にいえば、仕事=人を貶めることだっていうことになる。競争に勝つことってことは、負けた人を不幸せにするっていう、意味なんでしょう。

有村

…そうなってしまいますね。

藤村

はたして、いつから、いつからこんなことになっちゃったんだろうか。

もちろんビジネス、仕事っていうのは昔から競争の要素はありました。だけど、それはね。ある秩序っていうか、調和と言えばいいんでしょうかね。必ず、調和の中で競争してきたわけです。だけど、きょうの競争っていうのはもう、調和の外での競争となってしまっている。まさに、仁義なき戦いです。

有村

いまのマインドセットだと、仕事をすればするほど、人々が不幸せになり、仲が悪くなっていく…。

藤村

人々を不幸せにするために仕事をしてきたんじゃないはずなのに、いつのまにか、人を不幸せにする結果にばっかりなってしまう。

たとえば、ここ20年くらい、シアトル系のコーヒーショップチェーンが人気ありますね。それこそ世界中で絶賛されて、尊敬されて、みんな大好き。それはいいのだけど、そういったコーヒーショップが、これまでやってきたこと。これって、いったいなんだったんだろう…?

ひとつの街に喫茶店が5軒ある。その5軒というのは、親の代から、あるいは、おじいさんの代から、街の人たちと仲よくやってきた。

この街に、コーヒーショップはチェーン店を5軒つくっちゃうんです。投資家も銀行もみんな喜んでお金を出すからね。だって、たくさん戻ってくるから。お金があるということは、きらびやかになる。豪華になる。こうすると、なにが起こるか…?

簡単です。

それより前からあった、みんなと仲よく調和してきていた5軒は、なくなっちゃう。そして、ひとつのチェーン店が、ひとつの街のコーヒー文化を独占するということは、その街のコーヒーの値段設定も独占するということ。

有村

…なるほど。

藤村

そういう印象を持ってる。偏見かもしれないけど、そういうやりかたで、世界中に何千店舗と広げていくわけですよね。そうすると、ひとつの大商社以上の商品流通レベルになる。ブラジルから出発して、各地のコーヒー農園を支配してきた。

だって、そんな世界規模のチェーン店から「おたくのコーヒー豆、全部、仕入れてあげるよ」なんて言われたら、みんな有頂天でしょう。

こうなると、大企業と零細下請け企業の関係と同じ。買い取り手に嫌われたら生きていけないという状況ができあがってしまう。そうなったら、大企業のものです。「これからは買取値を半額にします」と言われる。これに応えられないと生きていけない。だから、そういった大企業に支配されたコーヒー農園は、もう、いかにして安くつくるか…そういう考え方でコーヒーを作ることになる。

シアトル系のコーヒーチェーンってのは、コーヒー豆を炭のように炒っちゃうんだ。だから、あんまり、コーヒー豆の質は関係ないわけね。そういうふうにして、のし上がってきた。

はたして、これのどこが立派な企業なのか?

立派なところなんか、ひとつもないんじゃないか。ぼくなんかは、そう思うんだけど。否定はしないけれど、まあビジネスの世界だから、そういうやり方をする人がいたっていいと思うけれど。ただ、みんなが絶賛するようなことじゃない気がする。なにか違うと思うんだよね。こういうやり方。…だけど、みんなが絶賛する。

立派な点を挙げるとすれば、たったひとつ、増収増益。ここだけ。

有村

たくさんの雇用を生みだしたとか。

藤村

まあそういうことかもしれないけれど。だけど、雇用を本当に生みだしたのかしら。だってね、世界中の喫茶店の数は変わらないんだから。新たに生みだしてる雇用のぶん、従来の喫茶店は雇用を失う。そうなると、雇用は生みだしてないように思うんだけど。

有村

…相殺されてしまう。

藤村

なにもほめられることないのに、みんなが絶賛するっていう。そこがまずいなと思うんですね。だから、仕事っていうものの考え方っていうものを、もう一回考え直してもいいかもしれませんね。

有村

仕事の話は切実ですね。

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