2スウェーデンの教え

ロフト
遠藤

スウェーデンの直接の恩師が、もともとデザイン学の研究者でデザイナーであった方ですが、ものすごく頭のいい先生でした。そしてとても親切でした。とても尊敬しています。
その先生に教わって、今言っているような事を考えるスタートをもらったような感じで。スウェーデンにはすごい恩義があるんです。

有村

たくさん書いていらっしゃいますね。

遠藤

こういうことを書いた本は、今まで、日本になかったですし、まして子ども向けに書いてくれる人は全くいないので、一生懸命書きました。

スウェーデンはだいたい人口900万人、というと、神奈川県とおなじ、あるいは東北6県を合わせたぐらいです。その中にサーブやボルボがあり、医学も進んでいます。どうやって、そういう国になれたのかなと思います。
かたや日本は今、少子化少子化と騒いでいる。一方でエネルギー問題もある。
スウェーデンを見ながら、疑問を感じます。
少子化とか資源がない国だからというのはありますけれども、森を全く使っていないのはどうかと思います。これだけの資源を資源として使わずに放置している。そして結局スウェーデンとか海外から材料を輸入しているのですから、おかしいなと思いませんか。

有村

思います。この本、「木でつくろう 手でつくろう」を読ませて頂
いて感じたことはこの中で答えを渡さないで、気づきの言葉、ポイントを
散らしているような気がしました。

遠藤2
遠藤

価値観を見せるのが大切な時もあるでしょうが、本来、教育では価値観を押しつけて教えてはいけないと考えています。自分の価値観を子どもたちがつくれる環境が大切だからです。

有村

そこはスロイド教育で個性遵守、自分たちの気づきを尊重されていますね。

遠藤

そこがものづくりの大事な部分ですよね。「創造性」をもった人間としてどうやって生きてゆけるのか。
「創造性」という言葉を人間に対して初めて使ったのは比較的新しく、もともとは「創造主」である神様に使っていた言葉です。

有村

そうですか。

遠藤

「創造性」という言葉は、1960年頃から人間に対して使い始められました。その当時、「スプートニクショック」がありました。ソビエトがアメリカよりも早く人工衛星を打ち上げてしまった。教育学の中では「スプートニクショック」という言葉は有名です。教育の転換期がそこにくるわけです。
ここでは、創造性ということが大事だということになりましたが、主に理数系に使う言葉になっていました。

有村

そうなんですね

遠藤

当時の創造性の研究というのはいろんなテストをするわけです。創造性のある人とない人をわける。そのために創造性の基準を見出そうとする。
でも今では、やっと、みんなに創造性があるんだ。あるいは創造性は育てられるんだという考え方に移ってきました。そこでようやく美術や音楽も大事だよねということになる。ようやくそこまでくるわけです。

有村

そうですね。

遠藤

すべての人に非常に平等にある「創造性」とは新しいものをつくりだす能力ですが、それには自分自身が「自立」していないといけないということもわかってます。

有村

このものづくりという行為そのものはどうなんでしょう?例えば手にナイフをもって木を削ってものをつくっていると「これはもともともっている本能なのか?」と思うことがあります。

アトリエ内
遠藤

「ものづくり」の行為、そのものがかなりプリミティブなところで僕らの精神に刺激を与えているんだと思います。その部分でおそらくそれぞれ人々が自主独立しているし、尊いものであるのだと思います。それぞれが創造性を持っているわけですから。私自身も創造性について論文を一本書いていますが、その「創造する」ということと「自立する」ことが同じカテゴリーにあると気付かされました。独立して自分で何かやっていく中で、それが刺激されるじゃないかと。何もない中で満足感を得て「私は私で生きていくんだ。」というような。

有村

きっとそうですよね。「自立」とは、やはり「食う」ためにある行為なんだと感じます。本能的に。そこにちゃんと競争もあるわけですよね。人のものを見て、私はこうしようとか、新しい工夫や知恵が働くわけですよね。

遠藤

ですからおもしろいのは、人間って、ものをつくるとき悪くつくろうとはしませんよね。必ず 少しでもよくしようとしますよね。

有村

そうですね。

遠藤

誰がやっていてもそうなんですよね。学生の人も一般の人も必ず「よくしよう。よくしよう。」と考える。向上心がすごい。努力もするし。しかもこれは結果がすぐにその場で見えます。
現実の素材そのものが変形して目の前に表現してくれる。木なんて木自体が美しさを表現してくれるわけですからなおさらですね。こちらがこうしたらどうかと削り方を工夫すればそれに応えてくれる。

有村

なるほど。

のみ
遠藤

すごくおもしろいんです。ナイフなんかきちんと研いであると削れる木の色までちがってくる。造形教育論を、一生懸命に論じている時より、学生に見せただけで、おおっと歓声があがる。感動してくれる。「先生すごいですね!」と言ってくれるのだけど、いやこれは木が応えてくれているだけなんです。
努力している話よりも一瞬の作業に歓声があがるわけです(笑)。木を削るだけで感動を与えられる、だから講演会をやるよりも実践する方が影響力を与えられるんだと思う。

有村

ぜひ、見せてくださいね!

遠藤

ぜひ!少しの人数で、ていねいにやっていれば、できる方はしっかり増えるはずです。主婦は学生よりもパワーがあってきれいにつくりますよ!家事で包丁も使えるし(笑)。可能性は限りなくあるはずですから。

有村

よろしくお願いします。

遠藤

こちらこそ、よろしくお願いします。

有村

ありがとうございます。

遠藤_有村
1.この本がうまれた背景
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10th anniversary
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