勤労感謝の日である2015年11月23日、budoriではシークレット・イベント『たのしごとカフェ シニア編』をbudoriオフィス併設のKINOへやで開催しました。非電化工房の藤村靖之さんをお招きし、皆さんといっしょに「たのしごと」を考えるトークイベント+ワークショップでした。前半のトークイベントを読み物としてまとめました。

シニアだけの仕事探し「キネヅカ」

有村:こんにちは。皆さん、祝日でありながらお集まりくださり誠にありがとうございます。本日は、非電化工房主宰にして『月3万円ビジネス』の提唱者であります藤村靖之さんといっしょに「シニアの仕事とマインドセット」についてお話を伺えたらと思います。

藤村:みなさん、こんにちは。

有村:よろしくお願いします。きょうは『たのしごとカフェ』のシニア編ということで、お集まりいただいたのですが、では、そもそも、なぜ「シニア編」なのか。まず、ここについて、budoriの納谷から、ご説明させていただけたらと思います。

納谷:みなさん、こんにちは。ことし、budoriで新しい事業を始めようと考え、スタッフ全員からたくさんのアイディアを出しました。そのアイディアのなかから、私が選んだのが「シニアの就職」でした。

私は恥ずかしながら、これまでずっと学生の延長のような気ままな社会人生活を送っていまして……。気楽に生きていたのですが、最近になって、親が定年退職することになったり、自分自身、結婚をすることになったりしたタイミングがつぎつぎにやってきて。それで、だんだん「老後」というものを考えるようになりました。

私は、これまで「老後」のことなんか考えたことがありませんでした。これと言って貯蓄もしてないし、健康にも自信がないし。日本も将来、どうなるかわからない。将来の生活が不安になってきたというか……。

そうして、たどり着いたのが、いまから紹介する事業です。まだ手探りですが、budoriとして進めていけたらと思っています。

いまの日本は、超高齢化社会です。4人にひとりが60歳以上になっていますし、子どもの出生率も下がっています。この少子高齢化の流れは、この先、どんどん加速していくでしょう。それは、労働力不足ということもあります。

都内のコンビニなんかを見ると外国人のかたが増えていますね。

年金もですね。私たちが年金をもらう頃には、きっと年金以外でも稼がないと生きていけないだろうみたいに言われています。いまでも、年金をもらっていてもぎりぎりの生活だという声もたくさん聞かれます。

それに働くということは、なにもお金をもらうためだけではありません。定年退職後に、ずっと家にいて、誰とも会わなかったりしている状態など、気も滅入ります。心身の健康にも良くない。それなら、働いて体や頭を動かしたほうが一石二鳥です。そのうえ、やりがいのある仕事を見つけたら、それ自体が生きがいになったりもします。

そうなんです。シニアも仕事を求めているのです。

しかし、シニア雇用の現状は?

私たちも飯田橋にある「東京しごとセンター」に見学に行きました。そこには、55歳以上のかたの就業支援をおこなう「シニアコーナーがありましたけど、まず求人情報自体が、とても少ない。ハローワークも同じ状況です。ハローワークに1回、来てみて。あまり仕事がないな……。と思うと、もう、何度も行く気が失せてしまいます。

ハローワークなんて古いよ。という声もあるかもしれません。「シニア向けの求人情報サイト」だって、すでにあるんじゃないの? なんて声もあると思います。実際、あります。あるのですが、そこにあるのは「シニアでもOK」という求人情報なんですね。それも大手企業の求人情報サイトの場合、「シニア向けに用意された入り口」はあるけれど、内部的には、同じデータベースの情報を掲載しているだけです。ですから、そこで検索して出てくる求人情報は「若者からシニアまでOKの求人」ということです。ですから、結局、若いかたから応募があれば、若いかたを採用するでしょう。

それから、職業の選択肢自体が非常に少ないのも問題です。皆さんは、シニアが働いている現場と聞いて、なにを思い浮かびますか。たとえば清掃や警備、歩道や駐輪場の自転車整理みたいなところですね。選り好みするのもよくないのかもしれませんけど、実際に定年を迎えた老人にとってはプライドが邪魔をするようです。

有村:男性のプライドは大きい部分ですね。

納谷:そこでbudoriがこの問題を解消すべく、新規事業を立ち上げようと考えました。それが、キネヅカです。「昔取った杵柄」という言葉がありますが、ここから杵柄をカタカナにして、親しみを込めたというか、いま風にしたわけなんですけど。

このシンボルマークは、赤い蝶ネクタイをイメージしています。還暦で赤いちゃんちゃんこを着ますが、ちゃんちゃんこのかわりに、赤い蝶ネクタイを締めて、また、新しい仕事に向かいますよ。という意味です。そして、このシンボルマークは、90度、くるりと回すと、杵をアイコン化したものにもなっています。

納谷:キネヅカの目指すところは、「シニアも」ではありません。「シニアだけの」仕事情報サイトです。具体的には60歳以上に限定した仕事の情報だけの掲載を考えています。

でも、そんなことを言うと「現実的に、そんな求人、あるの?」という声も聞こえてきそうです。

ところが、すでに、シニアの就業先として話題になっている企業は、いくつかあります。ここでは、2つの例を紹介します。

まずひとつめは、ファストフードチェーンのモスバーガーです。一部でニュースにも取り上げられて話題になっていますが、モスバーガー五反田店は、在籍するアルバイトのうち約2割が60代以上です。学生と比べて時間の余裕があるため、早朝や深夜の勤務シフトを入れることが多いようです。また、お客さんからの評判も良いとのことです。

budori代表の有村が、今日の『たのしごとcafe』の情報収集のため、事前にモスバーガーに取材を申し込んで、お話をうかがってきたのですが、特別にシニア層を募集したわけではなく、ずっと長く昔からパートで働き続けて、気がついたら60代以上のアルバイトが増えていたということだそうです。

もう一社が、岐阜県にある株式会社加藤製作所さんです。国産初のジェット旅客機、MRJのプロジェクトにも関わっているプレス板金加工業の老舗です。こちらはモスバーガーさんとちがって、意図してシニア層の求人をおこなっている企業です。10年以上前からシニア雇用に取り組んでいて、現在では社員の約半数が60代以上となっています。

金属加工が中心の企業ですが、多品種小ロットの受注に対応するためには平日だけでなく土日も工場を動かす必要がありました。とはいえ、通常の社員のシフトを変更して365日稼働するのは現実的ではない。そこで注目したのが高齢者雇用だそうで、これまでの若手社員とぶつかったりしながらも現在ではシニア雇用が企業として大きなプラスになっているということが、書籍『意欲のある人、求めます。ただし60歳以上』に書かれています。ぜひ読んでいただけたらと思います。

このように、ポジティブにシニア雇用を続ける例があります。企業のかたにも、マインドセットを組み替えていただいて、新しい求人づくりを一緒にしていけるような求人サービスをキネヅカでは実現したいと考えております。

今後、キネヅカというキーワードが日常会話でも通用するような未来を思い描いています。「私のキネヅカは、これだよ」って皆さんが言えるような社会に。

でも、なかには「私はただのサラリーマンで、キネヅカなんて……」というかたもいるかもしれません。ですが、そういうかたにも、自分の人生を思い返してほしいんですね。営業のかたであれば、それまでの営業経験や交渉技術、ビジネスマナーや、若手の人材育成だとか。それは立派なキネヅカです。漁師さんであれば、魚の知識、獲る技術、魚のさばき方、旬や調理方法などを知っているでしょう。会社勤めしたことがないという専業主婦のかただって、手料理や掃除の技術、片付け、子育て、家計の管理など、すべてがキネヅカになり得ると思っています。

ですからキーワードは、「シニアにも」ではなく「シニアだからこそ」なんです。

これは、企業側にも大きなメリットがあります。大きなところでいえば、単純に労働不足の解消です。時間に余裕のあるシニアであれば、土日だけであったり、早朝だけ働いてもらうようなワークシェアの働き方が進めやすい。年金受給者であれば、年金受給額に影響のない範囲の労働時間を希望される方も多いわけで、相互にメリットのある働き方となります。

貴重な技術や知識、経験を持っておられるかたも、キャリアとしてヘッドハンティングしようと思うと高い契約金や報酬を用意する必要がありますが、定年後の空き時間を有効に活用してもらって企業の相談役になってもらうなら、雇用のハードルも下がります。

また、社内の多様化もメリットです。いまの日本は核家族化が進んでいることもあり、多くの若手は高齢者との接点が希薄な場合もあります。しかし、社内にシニア層を取り込むことで、多世代交流による新たな刺激を得ることもできます。たとえばWebサイトの制作とかデザインという仕事も、10年前、20年前だとWebは「若い人が使うもの」で若い世代が中心となっていましたけど、いまは高齢者も使います。高齢者でも使いやすいWebデザインを考えるためには、使い方を押し付けるのではなく、シニアからのヒアリングも求められます。こういう考え方も、これからの高齢化社会にとって必要なものじゃないかと思います。

最後に、キネヅカの大きな展望について。シニア側の意識も、企業側の意識も一緒に変えていきたい。そして、リタイアという言葉もなくしたい。定年退職イコールリタイアっていう風潮がありますが、リタイアなんてすることはないんです。いま、若い世代にとって、老後には不安しかないように思います。自分たちが将来おじいさんおばあさんになることっていうことをマイナスに捉えています。だけど、将来、年を重ねたら、こんな未来がある。こんな働き方もあるし、こういう幸せが待っているというように希望を持てることが、キネヅカの展望です。

いま、いろいろ構想を練っています。2016年のリリースを目標に準備しております。よろしくお願いします。

有村:ありがとうございます。納谷からプレゼンテーションのあった、この新規事業は、budoriとしてもまだ手探りの状態なんですけども。シニアに仕事を作り出したい、シニアや企業の意識を変えていきたいということで、藤村先生にアドバイスをいただけないか、と思ったのが本日のイベントの趣旨のひとつです。

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