イオン・グループのフェアトレード専門店「フェアリーズ・フェイバリット」では、フェアトレード商品の販売を通じて途上国の支援をしています。株式会社budoriも、これまでフェアトレードを広めるイベントの開催や絵本の出版などに取り組んでいます。2016年からは「フェアリーズ・フェイバリット」で、budoriのオリジナル絵本『とりがおしえてくれたこと こどもにつたえるフェアトレード』を取り扱いいただいています。しかし、どうしてイオン・グループのなかでフェアトレード専門店を開いたのか。その経緯や今後の展望などが気になり、お話を伺いに行きました。インタビューにお答えいただいたのは、代表の水越美登利さん、担当の藤田郁子さんのおふたりです。

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フェアトレード専門店を開いたきっかけをおしえてください。

水越

2013年頃、私たちが所属するイオンで、新規事業を担うための社内公募「企業内起業家育成塾」がありました。
 
私は、ちょうど育児休業明けで職場に復帰した頃で、なにか新しいことをしたいという思いから、これの2回目の募集に応募したのがきっかけです。はじめからフェアトレードを柱として企業内起業家に応募しようというわけではありませんでしたが、コンサルティングの先生が「自分が本当にやりたいことを突き詰めて考え、それに絞りなさい」とアドバイスをくださったのですね。そして考えた挙句、フェアトレードなら一生かけてできることではないかと思いました。
 
学生時代に何度かインドやタイに足を運び、そこでの経験などが根底にありますが、フェアトレード商品を通じて社会に貢献するということが、イオンの基本理念にも合致すると思ったことも理由のひとつです。
 
また、私自身もイオンのプライベートブランド「トップバリュ」の経営管理を担当していましたが、もっとイオンとしてフェアトレードへの取り組みを進めたい、また進めなければならないと感じていたのも事実です。ちなみに、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」で初のフェアトレード商品を開発したのは2004年のフェアトレードコーヒーでした。国内のプライベートブランドとしては先駆けだったのですが、数万にものぼる商品の中で、たった数点のフェアトレード商品ということもあり、当時、認知力を上げるのは難しかったのです。

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水越さんが学生時代にインドやタイで得た経験についてお聞かせください。

水越

自分の人生観が変わるようなできごとがありました。
 
学生時代、女友達3人でインドに行きまして。いわゆるバックパッカーだったのですが、当時、流行っていたガイドブック『地球の歩き方』を持って現地で宿を探しながら……という旅です。インドは不思議な国で、とても美しい場所もあれば、その反対のような場所もあり、その落差が大きくて驚きました。
 
私たちは、ツアーで訪れる観光地よりも路地裏などに興味があり、よく歩きましたが、いちばん強烈に印象を受けたのはオールドデリーというたくさんの人が行き来する古い町でのことでした。物乞いの人もたくさんいたのですが、体が不自由な子どもが一番お金をもらえるそうで、親がお金欲しさに、わざと子どもの手や足をケガさせて障がい者にするとか……。実際にそういう子どもに会って、心が痛くなりました。
 
そのときの情景や、友達との議論はいまでもよく覚えています。子どもたち全員に十分なだけのお金をあげられることはできないですし。あげることで、逆にその負の連鎖が続きますよね。なので「お金は絶対に渡さないでください」と、周りの人は言うんです。私も学生でお金に余裕があるわけではありません。でも心のなかでは、ちょっとお金をあげたい気持ちもある……。そのような体験のあと、きれいなホテルに戻って裕福な場所も見て、余計にモヤモヤしたり。当時、外国語学科でインドの政治や経済、古典などを中心に勉強をしていましたが、そのときの体験がずっと頭に残っていましたね。
 
その後、就職してイオン社内で労働組合の仕事をしていたのですが、そこではじめて「フェアトレード」という言葉に出会いました。労働組合の上部団体が、国際協力NGOのシャプラニールさんと取引があったためです。シャプラニールさんは、南アジアの貧しい人々の生活上の問題解決に向けた活動を現地と日本で行い、とくに南アジアの伝統的な手工芸品などをフェアトレード商品として販売している団体です。現在もお取引いただいていますが、スタディツアーでバングラデシュへ行ったり、労働組合の会合でフェアトレード商品を販売したりするのが楽しくて。ですから、学生時代の経験と、就職してからの労働組合でのフェアトレードの出会いが、今のフェアリーズ・フェイバリットにつながっていると思います。

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藤田さんがフェアリーズ・フェイバリットを手伝うことになったきっかけを教えてください。

藤田

私はイオンに入社してから、ブランディング、人事総務部を経て、産休明けには人事総務内の環境担当となり、容器再生リサイクルやフェアトレードのライセンス、お金などの管理面を担当していました。フェアトレードについては、そのあり方やさまざまな国の取り組みなど、管理の側面から様々なことを学ばせていただきました。
 
当時、フェアトレードの認証ラベルなどに触れ、どれも大切な考え方ではありましたが、時折「全てが公平、全てが完璧」でなければ、倫理的な取り組みをしていることを伝えてはいけないという暗黙のルールのようなものに違和感を感じることがありまして……。
 
そんなとき、水越が新しくフェアトレードの取り組みをはじめると聞いて、参加させてもらうことにしました。フェアトレード商品と言っても、さまざまなものがあります。実態を調査して本当に正しいものを選んで、フェアリーズ・フェイバリットの店頭に並べたいと思っています。「世の中が良いと言うから」という理由で扱うのは、違うような気がしたのです。

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水越さんは、実際にお店をはじめられていかがでしたか。

水越

立ち上げの頃によく店頭(イオンスタイル湘南茅ヶ崎 F.T内のフェアリーズ・フェイバリット)に立っておりまして、あるとき来店されたお客さまに、商品を手にとりながらフェアトレードの説明をしたことがありました。
 
そうしたら「わかりやすい説明を初めて聞きました」と言ってくださった方がいて。とても嬉しかったのを覚えています。ほかに「知らなかったけど、そういうものなのね。また来ます」というお客様もいました。お買い上げにはならなかったとしても、フェアトレードの価値観を共有できたときに「ああ、良かったな」と思いました。
 
いきなり「フェアトレードとは……」から始まると「えーと、発展途上国は……」ってなっちゃうんです。そうすると、頭の中に映像が残らないんですよね。だからやっぱり「言葉」だけでなく「商品」が置いてあることが大切なんです。
 
商品に興味を持って、手にとってくださったお客様に「これはバングラデシュのお母さんたちが、こうやってチクチクとベンガル地方伝統の刺繍、ノクシカタを作ってるんですよ」とお伝えすると、お客さまの頭の中で言葉が映像になって、自然と心に届くんですね。

フェアリーズ・フェイバリットチーム 水越美登利さん

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藤田さんはお店をはじめられていかがでしたか。

藤田

ただ「フェアトレードを説明して」と言われても、小さい子どもに伝えようとしても、きっと上手にはできないし「文字にして」と言われても、なんか上手いことできないなっていつも思うんです。
 
でもお店にくれば実際に現地の人が作った商品が並んでいて、そのお店が持つ雰囲気で「フェアトレード」の背景が伝わる気がしています。絵本も同じだと思います。文字にして一つひとつ説明してるわけではないけど、読み終えると「あ、そういう感じね」とわかる。
 
フェアリーズ・フェイバリットの店内には、そういう雰囲気が満ちていると思います。
 
フェアリーズ・フェイバリットを立ち上げたときに、水越が「フェアトレード商品が『国産』みたいな感覚になればいいね」って言ったんです。日本人の感覚として、なんとなく「国産」って安心できるし、一定のブランド力があります。フェアトレードも、商品としては良いものですから。生産者のためだけど、お客さまも嬉しいし、私たちも嬉しいという場所。フェアリーズ・フェイバリットが、皆さんにとって、そんな嬉しさを共有できるお店になってくれたらと思っています。

藤田郁子さん

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今後の展望などをお聞かせください。

藤田

環境意識やの意識が高い人は、フェアトレード商品やその背景などに見識が深いと思いますが、まだ浸透しているとは言えません。私たちには、フェアトレードがもっと身近になって欲しいという思いがあります。
 
フェアトレード商品の専門店はいろいろありますが、イオンのようなショッピングセンターのなかにあることで、みなさんの目に触れやすいというのは大きいことだと思います。ですから「特別なものを買いに行く」わけではなく、当たり前のようにフェアトレードの商品がある場所として、フェアリーズ・フェイバリットをたくさんのひとに知ってもらえたらと思っています。

イオンスタイル湘南茅ヶ崎 F.T内のフェアリーズ・フェイバリットを訪れました。店内には、衣類、食品、雑貨、伝統工芸品など、さまざまなフェアトレード商品の取り扱いがあるなか、budoriの絵本が一緒に並んでいるのを見て嬉しく思いました。
なかなか伝えることが難しいフェアトレード。言葉の意味は「公正な取引」ですが、単に公正な金額であれば良いわけでなく、児童労働をしていないか、環境に配慮しているか、継続的に取引が続くようなしくみになっているか、なども大切な要素としてあります。
その点で、フェアリーズ・フェイバリットは湘南茅ヶ崎店(神奈川)のほかに、東戸塚店(神奈川)、鎌取店(千葉)、長久手店(愛知)、宇品店(広島)の計5店舗。また、このほかにもフェアトレード商品コーナーを持つ店舗があり、トップバリュでもフェアトレード商品のラインナップが増えています。
水越さんや藤田さんのおっしゃる通り、イオン・グループであれば意識せずにフェアトレード商品に触れることができます。食品や文房具などを継続的に購入することで、支援をすることができるように感じました。
皆さんも、ぜひイオンに足を運び、フェアトレード商品を探してみてください。


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