budoriのたのしごとインタビュー 自分の仕事をなくしていくこと 菅原伸忠×有村正一

「与えられる」より「与える」を前提に

有村  さて、すこし難しい質問をさせてください。

僕が気になっているのは、たとえばこれから、いろんな価値観をもって自分のしごとを見つけていく子どもたちに対して、菅原さんがやっているしごとをどういうふうに伝えるかっていうことです。

菅原  ああ、僕がやっているのはこういう「しごと」ですよ、っていうことを?

有村  そうです。大人向けには、さっきの説明でだいぶ理解できたとおもいます。さっきのお話、すごくわかりやすかったので。それを今度は、もう少しひらたく。

菅原  子どもに対して…。そうですねえ…。

まあ、「おもろいしごとやで」って言いますけどね。やっぱりおもしろいですね。なんか、いろんなことができる。いろんな人に会えるし、いろんな経験も積める。愉しいとか、やったほうがいい、と思ったことを、そのまま自分のしごととしてやることができるから。

有村  たとえば、子どもの頃から正義感の強い子がいるとするじゃないですか。

そういう子が、菅原さんが読んだ本のように、何かのきっかけで「僕はこっちの道へ行きたい」と思うとする。その正義感っていうのは、担保できるものなんでしょうか、この仕事を続けていくうえで。

菅原  うーん。それは、自分次第でしょうね。「正義」という言葉は、誰にとっても相対的なものなので、なんとも言えません。

業界そのものに、絶対的な「善」というものはない。だからこそ、そこで構造をうまく利用して、甘い汁を吸おうとする人もゼロではないです。

なんとなく自分の評価を上げたいからとか、そういうようなことだけを考えているような人も、おそらくいるわけですよね。

そのなかでも本当にいい仕事をするか、できるかどうか、という信念は、周りが担保してくれることじゃなくて、自分で守らなきゃいけないことなんだと思います。
たぶんそれは、何においてもそうなんだと思いますけど。

どれだけ手を抜かずに、自分が求めたレベルに自分のしごとを近づけるか、ということ。それは、自分と誰か、ではなくて、自分のなかの自分との争いになるわけじゃないですか。ただ、それを一般の社会で、会社の中で貫いていくのって、結構難しいことなんですけどね。

でも、そのなかでは比較的スムーズに、思った「しごと」を貫いていけるということ。そして、周りの理解を得やすいということが、このしごとにはあるんじゃないか。

…と、思うんですけど。

有村  最後にもうひとつだけ。ご自身の夢って、なにかありますか?

究極にはこんなことを考えている、っていう。さっきお話されていた、NGOがなくなって、職を失う、そのぐらいの世界にしたい、というような

菅原  やっぱりそれが、夢ですね。そういう世の中になってほしいですから。

そのためになにか、役に立てるようなしごとができたらいいなと思います。

ひょっとしたら、何年か経った後には、僕はまた別のしごとを選んでいるかもしれません。ただ、生涯における全体の方向性としては、そういうふうにしたい。「若輩者め」みたいな批判を受けるかもしれないですけど、それを覚悟で言うと…。

たとえば経済学の理論にしても、僕は、いまはもう制度疲労を起こしていると思っているんです。なぜなら、「いかに得るか」ということが前提の経済学だから。

そうじゃなくて、「いかに与えるか」と言う方向で、これからは多分考えるべき時期にきているし、そのための新しい理論的枠組みっていうのも必要とされているはずなんです。

有村  なるほど。確かにそうです。

budoriの社内でもよく話題に出すことなのですが、「どれだけ搾取できるか」ということを、マーケティングありきの方法を考えながら働くのって、たいへん疲れるものなんです。でも「いくら与えられるか」って言うことを考えれば、疲れるのとは反対になる。

菅原  そうなんです。「与えられる」じゃなくて、「与える」っていうことが前提になるようにもっていきたい。

シャプラニールでは、支援活動のことを「エンパワメント」って呼んでいます。

エンパワメントには、いろいろな解釈と表現のしかたがあるわけですが、僕の考えるエンパワメントは、与えられる立場を、与える立場に変えることなんです。

これまで、バングラデシュなど現地の人びとは、非常に厳しい状況に置かれているから、「誰かからなんらかの支援を受ける」っていう前提で、そういうマインドでいた。

でも、彼らが、「自分はこういうかたちで、人様の役に立てるんだ」とか、「こういう仕事で人を喜ばすことができるんだ」とか、そういった自覚を得る。その瞬間ってまさに、与えられる側から与える側に変わることじゃないですか?

そういう立場に変わっていくことを、僕はエンパワメントだと思っているんですね。そういう意味での「エンパワメント」にかかわる事例や人を、これからもっと増やしていきたい、というふうに感じます。

有村  スタディツアーのとき、僕も現場で見て感じたことなんですが、

「助けてくれ」って言っていた人びとが、お金が必要だから、自分で仕事をつくって。それで自立できたら、自信がついていくんですよね。

菅原  生み出すからこそ、与えられる。「求めよ、しからば与えられん」っていうコトバがありますけど、たしかに方便としてあるんですね。だけど、さらにその上をいく考え方として、たぶん、与えるからこそ、与えられる部分がある。

有村  なるほどね。

菅原  世の中がみんな、そういう方向で回っていくと、すごくスムーズにいくんです。いろんなことが。

たとえば、バングラデシュやネパールの、渋滞している道路状態。みんな、我先に、我先にって言うから、全体的にもすごい混んじゃう。でも、どうぞ、どうぞって譲り合えば、進んでいくはずなんですよ。

どういうかたちでかはわからないけど、そういうふうに思ってくれる人を、増やせればいい。そんな仲間を増やしていけたらいいなと、思っています。

対談を終えて記念の1枚
対談を終えて記念の1枚
取材日
場所
国際NGO・シャプラニール 会議室
インタビュア
有村正一

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