プライドシフト・トレーニング

有村:そういうプライドをはずす方法論についてお願いします。

藤村:ガチガチになっているおじさんは、若いお嬢さんに嫌われます。おじさんっていうのはね、自慢、合理化、批難ばかりです。だからこの3つを、どうやって排除するか。間違っても言ってはいけないのは、なんの脈絡もなく「きみね、僕がナントカ重工の部長だった時の話ですけどね」なんて話ですよ。

そういうことは絶対タブーというわけではない。だけど、そんな脈絡のないことで自慢して自分をかっこ良く見せたいなんていうのは、おじさんなの。

ずっと昔、僕は「おじさん解剖図」って描いて広まった図がある。いま、誰も知らなくなっちゃったんだけど。どんなものかというとね。

男の人が立っている。それで「社会貢献だ!」とか「豊かな発想だ!」とか叫んでるわけ。

解剖図ですからね。頭、体、心をそれぞれ、解剖してみよう。ということになる。では、まず頭を解剖してみよう。頭を開いてみるとね。そこにあるのは「思い込み」と「決めつけ」と「こだわり」。これが三等分です。もうね、この3つで「ガチガチ」なわけ。

つぎに心。これは「不安」と「焦り」と「欲望」で、「ドロドロ」。

最後に体。体は「炭酸ガス」と「乳酸」と「脂肪」で、「ボロボロ」。

こんなガチガチの頭、ドロドロの心、そしてボロボロの体からは豊かな発想ってあり得ないんですよ。

この解剖図は、当時、本当に受けたんだ。実際、だれに受けたかっていうと、圧倒的に女性に受けた。女性たちから「本当にそうなのよ」って。「このおじさんたちをなだめながら、おだてながら、付き合っていく私たちの苦労もわかってくださいよ」ってね。

藤村:調子に乗った僕は、今度「おばさん解剖図」っていうのを発表したの。そしたらねえ。これは、もうものすごくひんしゅくを買ってしまって。本当に大ひんしゅく。

有村:本当ですか?

藤村:これはユーモアですから。怒らないでくださいね。おばさん解剖図を説明しますね。

まず、頭。頭はこういうふうにね。真っ白にして「からっぽ」って描いた。体はね。「100%脂肪」で、「ブクブク」。心はふたつに分けました。「欲望」と「妬み」。欲望と妬みは裏返しなんだけどね。これもまた、受けると思ったんだ。だけど、みんなヒステリックに「女性蔑視」って言うわけです。「おじさん解剖図」を描いたときに、だれも「男性蔑視だ」なんて怒らなかった。そのとき拍手喝采した女性たちからは「おばさん解剖図」が大ひんしゅくでした。

藤村:ま、おばさん解剖図はちょっと余計でしたけど。ともあれ、ガチガチ、ドロドロ、ボロボロのおじさんからはね。ワクワクドキドキ、なにか生み出せるかって、無理なんですよね。いろいろ事前にトレーニングが必要になってくる。それで、このガチガチ、ドロドロ、ボロボロから飛び越えてもらう。

しかも、厳しくちゃだめ。その飛び越えるトレーニングそのものをワクワクドキドキしながら愉しめる状況でないとね。逃げちゃいます。まあ、逃げてしまう人は、逃がしとけばいいんですよ。それでいい。

でも、なにがしかの人は、そのトレーニングを「面白い」って思ってくれるはずです。そういう人たちだけ残ってくれたら、それがいい。

有村:素直な人が残るということですね。

藤村:いろんな方法論がありますから。とにかく方法論を考える方がいいと思いますよ。

たとえば、企業だって、そういうことです。方法論をしっかり考えた企業っていうのは、とてもクリエイティブな会社になってるね。

有名な会議の方法論として「Six Thinking Hats」というものがあります。

Six Hatsって、6つの帽子です。会議に参加するかたは、6種類の色の帽子のどれかを必ずかぶります。それぞれの色に、それぞれ役割があってね。その役割通りの性格を演じて、振舞わなくちゃならない。

  • The Blue Hat(見渡す空)
    何を考えるのか決める。決断する。
  • The White Hat(ノート)
    客観的な情報や事実を言う。
  • The Green Hat(木の芽)
    アイディアを出す。可能性を考える。
  • The Yellow Hat(太陽)
    ポジティブに考える。
  • The Black Hat(裁判官の黒)
    ネガティブ、デメリットを考える。
  • The Red Hat(炎)
    直感・感情で判断する。

本当に、いろいろな方法論がある。精神論じゃなくて方法論で考える。そうすると、面白いことが起きるかもしれないですね。

有村:そうですね。新しいことを自分で創れと言われたら、なかなかやっぱり創れません。自分ひとりで創ろうとすると、不安とプライドに負けてしまう。

私の通った発明起業塾でも、合宿というのがありました。「今晩、200個のビジネスモデルを考えなさい。考えなければ寝てはいけないよ。では、おやすみ」っていうことがありました。

なかには、1個目出るまでに3時間ぐらいかかる人もいるんです。本当に、これは冗談抜きで。「新しいこと考えたことないから」って、自分を変えるために3時間。

藤村:10個や20個考えろって言うならね。長く生きてるひとなら、過去の経験からひねくり出しちゃうんですよね。でも、それでは壁は飛び越えられない。その壁を飛び越える方法が、100個ですね。

有村:苦しいですね。

藤村:なんとか苦し紛れに20個出すけども、そこから先にいこうと思ったらね、やり方を考えなければ無理です。必ず何か方法論を考えなければ、出てこなくなります。そうやって、方法論を考えるところがスタートラインです。それからもうひとつは、自分が過去やったことないことまで踏み込むことです。そうすると、好きなことが見つかりやすい。

有村:そうですね。

藤村:できれば仕事というのは、好きなことをやって欲しいんですよ。それまでは義務感に満ちて、社会のため家族のためやってきたかもしれないけど。ここから先は自分のためにやって欲しい。

だとしたら、好きでたまらないことやって欲しいんだけど。問題はね、それまで会社命でやってきた人は、好きなことがないんですよ。

やられずにはいられないほど、好きでたまらないこと、それをやってさえいれば幸せ。上手くいこうが失敗しようが、そんなことどうだっていい。人から「バカじゃないか」って言われようが、そんなことどうだっていい。やってること自体が嬉しくてたまらない。

そういうね。やらずにはいられないようなことを、「好き」って言うんですよ。

そういうものを、ひとつでも持ってる人は、それだけで人生幸せなんだから。

だけどね。それを、みんな持ってない。皆さん、好きなことが狭すぎる。あまりにも狭い。だからね、未来形まで含めて好きなことっていうふうに、自分の好きなことを広げちゃったらいい。そうでなければ、いい仕事、面白い仕事は見つからないと思う。

おじさんはね。「儲かること」と「得意なこと」が重なるところにしか仕事を見つけようとしないから。

有村:確かに。そこでマインドセットを切り替えるということになります。ほとんどのシニアのかたは、そういう人ばっかりでしょう。まず、このプライドを捨てる作業に時間がかかりますね。

藤村:乗り越えなくちゃいけないですね。

有村:でも最後はできるようになるんです、実は。「100個考えなさい」って言われて、好きなことを広げて、本当に素直になったときには「100個できた」、「俺は200個できた」みたいな方も出てきます。

藤村:そうです。方法論さえしっかりしていれば、人ってすぐ変わるんだなって思いますね。

やっぱりね。「最初からキャリアを活かす」っていう壁を乗り越えないとね。まずは、それを捨てることです。企業で40年、50年頑張って生きてきた人が、さあまったく新しいことをやろうと言ったってね。最初は若い人の方が早いかもしれないわけです。

だけど、後から、キャリアっていうのが活きてくるわけです。じわじわとね。直接は関係ない仕事だとしても、必ず後から出てきますよ。キャリアの差が。そこに自信を持てることが大切なんだけど。

だけど最初のうちは不安だからね。「若い人には敵わないんじゃないだろうか」「恥かくんじゃないだろうか」「ばかにされるんじゃないだろうか」って。

有村:年をとってからの新しいことは、きっとそうです。

藤村:だからそれを取っ払うにはね、ワクワクドキドキ。

有村:藤村先生の著作『月3万円ビジネス』は、たくさんの制限とワクワクドキドキの方法論ですね。ものすごく、ゆるいのかなって思いきや、いざ、考えようとすると、かなり制限がありますよね。

だけど、決められない人だからこそ、制限をかけてあげないと、たぶん出てこないんだと思うんです。すごくいっぱい、制限があります。

たとえば、1ヶ月に2日しか働いてはいけない。インターネットで販売してはいけない。支出を抑えなさい。そのかわり、月3万円で足りなければ、2つ、3つとやって「複業」しなさいと。「副(サブ)」ではなく「複(マルチ)」です。

藤村:新しい仕事にはリスクがつきものっていうのをみんなが思い込んでるでしょう。ですから「ノーリスクじゃなきゃいけません」っていうのがもう、絶対の掟です。

この本は、2011年に1冊目を出して、2015年に続編となる『100の実例』を書きました。いま、日本全国、北海道から沖縄まで、日本中でこれやってくださってる人がいるけど、たいてい女性と若者です。おじさんがやってる例はほとんどありません。

おじさんはね、一番大事なリスクが残っちゃってるんですよ。「上手くいかなかったら恥ずかしい」っていうプライドリスクが。

有村:そういうプライドの持ち方を変えていかなければですね。

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